ReTech(不動産テック)のポイント
ココがポイント
不動産ファンドの拡大などこれまでになかったサービスの提供が始まった
不動産価格の透明化にも寄与する
業者のレベルアップ、投資家の裾野拡大が期待される
ココに注意
まだまだ発展途上で、データの蓄積が望まれる
ReTech(不動産テック)とは
「不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」と定義されています。
「金融(Finance)」と「技術(Technology)」を組み合わせたFinTechがもっとも有名な〇〇Tech、x-Techと呼ばれるものの一つで、そのほかにもAgriTech(Agriculture(農業)×Technology)やHealthTech(Healthcare(ヘルスケア)×Technology)などがあります。
参考資料:不動産テック協会サイト
不動産ファンド関連のReTechサービス
不動産テック協会によりカオスマップが作成されており、マップへの掲載要件として下記が挙げられています。
- AI(人工知能)、IoT、ブロックチェーン、VR/AR、ロボットなど現時点において先進的なテクノロジーを活用しているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しい価値や顧客体験をつくりだしているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、従来(インターネット普及以前)には無かった新しいビジネスモデルや収益モデルを実現しているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、既存の業界課題の解決や商習慣・慣例を打破しているビジネスまたはサービス
- 一般的なITやビッグデータを活用することで、オンラインプラットフォームを実現しているビジネスまたはサービス
インターネットを介した不動産系クラウドファンディングはまさにインターネット普及以前にはなかったビジネスモデルで、ReTechの一つの分野と考えられます。
不動産ファンド事業者の例
LC FUNDING
OwnersBook・・・OwnersBookを調査
FANTAS Funding・・・FANTAS Fundingを調査
TATERU FUNDING・・・TATERU FUNDINGを調査(但、現在募集停止中)
それ以外にも不動産ファンド関連のReTechサービスとして、中古不動産の査定・価格の可視化があります。
各社が蓄積してきたこれまでの不動産売買のデータをAIに学習させることで対象不動産(特にマンション)の現在価値を査定することができます。
不動産ファンドに関連するReTechサービスの例
● AI checker https://www.ai-checker.com
・・・OwnersBookのロードスターキャピタルが運営する不動産の価値を算出するAIシステム
● FANTAS check https://www.hayagai.com
・・・不動産歴の長い専門家が持つデータをインプットしたAIを用い、リアルタイムに査定価格を算出
● Renosy https://www.renosy.com
・・・自社開発のAIを活用し「収益性」「資産性」を客観的に評価するために独自のスコアリング指標を採用
● IESHIL https://www.ieshil.com
・・・約9,000万件の賃貸情報、売買履歴などのビッグデータをもとに現在の価値を査定
● PRICE MAP https://www.homes.co.jp/price-map/
・・・LIFULLHOME'SのLIFULLが運営し、同社が蓄積してきた膨大な物件情報と独自開発の不動産参考価格算出システムを使って470万戸ものマンションを査定
不動産価格の透明性は最重要!
ビッグデータという言葉はかなり浸透し、様々なところで利用されていますが、不動産業界では情報が社内から外に出にくい体質があるためまだまだ活用が十分ではないと言われています。
不動産投資をするにあたって相場やこれまでの売買履歴といった情報は非常に重要であることはいまさら言うまでもありません。
不動産価格が容易に調査できるようになり、透明性が向上すれば投資家や購入者は基本的な情報を自ら入手して業者に相談ができます。
そうすれば不当な価格で売ろうとするような業者は淘汰され、業界全体のイメージアップにつながり、ひいては不動産投資へのマイナスイメージの払拭にも効果があると考えます。
その結果として、投資家の裾野が広がることは不動産業界にとって決して悪いことではないはずです。
不動産ファンドの中でも不動産特定共同事業法に基づくファンドやOwnersBookのエクイティ型案件など、対象不動産が明確であるファンドも増えました。
このようなファンドへの出資を検討する場合にも不動産価格の透明性向上は大きなメリットがあります。
AI査定の現状と課題
上にあげたマンション査定システムが実際のマンションの査定でどのような結果を出すのか比較してみました。
対象のマンションは当サイトでもファンドの検討を行った「AXAS蒲田」です。
参考までに、FANTAS Fundingの評価額は2260万円としていました。
もっと詳しく
表 各査定システムの結果比較
システム | 査定額(万円) |
FANTAS check | 1393〜2151 |
IESHIL | 1749 |
PRICE MAP | 1826〜2078 |
平均してみれば1840万円程度ですが、各査定システムで微妙に差が出ています。
これは不動産売買のデータは数千万件に上ると言われていますが、一つのマンションに絞ってしまえば多くても数十件程度になってしまうことが原因と推測します。
例えばタクシー配車アプリ「滴滴(DiDi)」では1日あたり3000万件のデータを収集しているとのことで、AIの精度向上のためには膨大な数のデータが必要なことを示しています。
今後の課題としてエリアごとのデータを総合して査定額を出すシステムや不動産価格のトレンド(上昇中・下落中)まで予測できるシステムの開発が期待されます。