大阪圏の地価上昇率を調査
3月19日に発表された公示地価の上昇率が上位であったエリアと関西の成長力のある街ランキングと比較し、公示地価上昇率と相関のある指標を検討し、地価上昇の理由に迫ります。
ココがポイント
○ 関西圏の住宅地で上昇率が最大だったのは箕面市白島
→ 箕面市は社会増減率、小売店増加率も高い
○ 関西圏の商業地で上昇率が最大だったのは大阪市中央区日本橋
→ 中央区は社会増減率、小売店増加率も高い
公示地価は社会増減率・小売店増加率との相関が高い
メモ
・社会増減・・・引っ越しによる転入・転出によって起こる人口の増減のことで、転出が多い時は「転出超過」、その反対は「転入超過」(出生や死亡による増減は「自然増減」)。
・合計特殊出生率・・・「一人の女性が15歳から49歳までに産む子供の数の平均値」のことであり、この値が高い街ほど子供が増えやすいことを示す。
・小売店増加率・・・直近4年間の百貨店、ショッピングモールなど全てを含む民間小売店事業所の数の増減率を表す。
大阪圏公示地価上層率ランキング
住宅地と商業地に分けてTOP3を発表します。
あわせて、上昇率が1位だったエリアは、成長力の指標と考えられる社会増減率、合計特殊出生率、地価上昇率、小売店増加率の順位を一覧にします。
住宅地の公示地価上昇率TOP3
2018年と比べた住宅地の上昇率TOP3は箕面市、京都市で大阪市内はありませんでした。
順位 | 調査地点 | 地価(㎡単価) | 前年比(%) |
1位 | 箕面市白島2丁目 | 16.7万円 | +19.3 |
2位 | 京都市左京区岡崎円勝寺町 | 41.5万円 | +15.3 |
3位 | 京都市東山区枡屋町 | 38.0万円 | +15.2 |
1位の箕面市白島(「みのおし」・「はくしま」または「はくのしま」と読む)2丁目で、地名だけでは場所がイメージできませんが、周囲の開発が著しい場所です。
地価自体は非常に高いというわけではありませんが、前年比約20%となったのには理由がありました。
箕面市と白島周辺エリアを調査
白島周辺エリアには2003年「箕面マーケットパーク ヴィソラ」(2013年「みのおキューズモール」に改称)がオープンし、イオン箕面店と共に発展していたところに、2023年度に北大阪急行が延伸し、「箕面船場阪大前駅」と「箕面萱野駅」2つの新駅ができることになったのです。
「北大阪急行」というと土地勘のない方はピンとこないと思いますが、わかりやすく言えば大阪メトロの御堂筋線がこれまでの終点千里中央駅(豊中市)から北に伸びることになった、ということです(正確ではありませんが、イメージしやすさを優先しました)。
今回地価上昇率が1位だった箕面市白島はこの箕面萱野駅のすぐ北に位置しており、梅田まで直通24分という好条件の立地になったことが理由だと推測されます。
早速現地に行き、周辺環境や開発状況を調査してきましたので、詳細は別記事にしますが、少しだけ写真を掲載します。
こう言っては失礼ですが、ぱっと見てこのエリアが地価上昇率1位だとは思わないですよね?
この写真は北方向を向いて撮ったものですが、南方向に向いて撮影すると・・・
何か得体の知れない橋が道路の上にかかっています。
この橋の向こう側には・・・
みのおキューズモールが登場!キューズモールが道路の東西に分かれており、それをつなぐ橋だったんですね。
この辺りは白島ではなく萱野(かやの)という地名で北大阪急行が新駅・箕面萱野駅を新設する計画です。
箕面市の大阪市を除く大阪府内での指標別順位は以下の通りです。
指標 | 順位 | 結果 |
社会増減率 | 1位 | 103.6% |
合計特殊出生率 | 圏外 | --- |
地価上昇率 | 4位 | 106.4% |
小売店増加率 | 3位 | 115.6% |
成長力を示す各指標の中で大阪府内(大阪市除く)で社会増減率が堂々の1位になっており、人口流入が活発であることがわかります。
一方で、合計特殊出生率は10位以内に入っていないことから、若年層の流入が少ないか、まだ出生率の上昇には繋がっていないと推測され、今後の動向が注目されます。
この結果から、地価の上昇と社会増減率、小売店増加率には相関があると考えられます。
商業地の公示地価上昇率TOP3
2018年と比べた商業地の上昇率TOP3は大阪市、京都市でそれぞれの町の中心地の上昇率が高い結果になりました。
順位 | 調査地点 | 地価(㎡単価) | 前年比(%) |
1位 | 大阪市中央区日本橋(黒門市場) | 120万円 | +44.4 |
2位 | 大阪市北区茶屋町(エスパシオン梅田) | 581万円 | +44.2 |
3位 | 京都市東山区祇園町北側 | 280万円 | +43.6 |
1位になったのは前年比44.4%上昇した大阪市中央区日本橋で黒門市場・千成屋でした。
黒門市場は約180の小売店からなり、特に鮮魚店や魚介類を使った飲食店が多く、インバウンド向けに外国語表記のあるお店も増えています。
大阪市中央区は成長力のある指標が高く、資産価値の高い駅を複数有している管理人注目のエリアです。
中央区の大阪市内での各指標のランキングは以下の通りです。
指標 | 順位 | 結果 |
社会増減率 | 1位 | 112.3% |
合計特殊出生率 | 圏外 | --- |
地価上昇率 | 9位 | 104.6% |
小売店増加率 | 2位 | 119.1% |
大阪市内で社会増減率は堂々の1位になっており、人口流入が活発であることがわかります。
一方で、合計特殊出生率は10位以内に入っていないことから、若年層の流入が少ないか、まだ出生率の上昇には繋がっていないと推測され、箕面市共々、今後の動向が注目されます。
箕面市の結果と同じく、地価の上昇と社会増減率、小売店増加率には相関があると考えられます。
2位の大阪市北区茶屋町エスパシオン梅田ビルも地価が581万円と高額にも関わらず前年比44.2%と高い伸び率を示しています。
茶屋町は阪急梅田駅の東側にあり、「NU茶屋町」「茶屋町チャスカ」「茶屋町あるこ」など商業施設が充実していて、特にファッションに関心のある若者が多いエリアです。
写真撮影時、若者が多いのはもちろんのこと、外国人観光客も多数みられました。
北区は社会増減率が大阪市内3位、小売店増加率は大阪市内1位であることから、やはり公示地価の上昇と社会増減率、小売店増加率には相関がありそうです。
大阪市中央区や北区の社会増減率、合計特殊出生率、地価上昇率、小売店増加率の詳細は別記事にまとめていますのであわせてご覧ください。
あわせて読みたい
まとめ
住宅地と商業地の公示地価の上昇率1位だった箕面市と大阪市中央区は共に社会増減率の上昇度も1位という共通点がありました。
小売店増加率が高いことも共通しており、公示地価の上昇率と社会増減率・小売店増加率は良い相関があると考えられます。
一方で、箕面市も大阪市中央区も合計特殊出生率はTOP10圏外で、出生率と公示地価の相関は見られませんでした。
社会増減率が高くなると地価が上昇するのか、その逆か、または同時なのか、不動産投資に活かせるよう研究を続けます。
今後は、将来の地価上昇が見込まれるエリアの指標についても調査していきます。